こんにちは、担当Oです。
企業が実施する健康診断やSAS(睡眠時無呼吸症候群)スクリーニングは、SASの可能性に気づく一つの入口です。
ただ、せっかく健診で気づくきっかけがあっても、その後の受診や治療につながらなければ、SAS対策につながっているとは言えません。
「健診で気づく」ことより、「医療につないで、続ける」ことのほうが、ずっと難しい。
せっかく健診でサインを拾っても、受診の手前で止まる。
検査まで進まない、治療が続かない。
こうなってしまうと、健診は「受けただけ」で終わってしまいます。
これは企業のSAS対策を考える上で、一番もったいないポイントです。
この記事では、要受診者を医療につなぎ、その後の治療まで切らさないための「仕組み」に焦点を当ててお話しします。
今回の記事を読む前に▼
まずは基礎をおさらい:検査からCPAP治療につなぐ実務フロー
1. 健診で「見つける」だけでは終わらない ― 本当の分かれ道は“受診のあと”にあります
いちばんもったいないのは、受診勧奨のあとで止まること
企業健診の結果通知に「要受診」と書かれても、実際に医療機関へ足を運ぶにはハードルを感じる人もいます。
これは本人のやる気の問題というより、通知の出し方・受診のしやすさ・周囲のサポートといった“環境”の問題であることが少なくない、と感じています。
SASは、本人が症状や重症度を十分に自覚していないこともある疾患です。「自分は大丈夫」と思っている人ほど、動き出しにくい。
だからこそ、企業側が“待つ”のではなく“つなぐ仕組み”を先に用意しておくことが重要になります。
制度も、「つなぐ・続ける」を後押しする方向へ
少し視野を広げると、医療提供の側でも、SAS治療は「始めたら終わり」ではなく「きちんと管理して続けること」が重視される方向に動いています。
たとえば2026年度診療報酬改定では、CPAP治療について「持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算」が新設されるなど、使用状況を把握しながら適切な指導管理を行う体制が評価されています。
また、一定の要件のもとで遠隔モニタリングを活用した管理も位置づけられています。
※点数・算定要件の正確な内容は、必ず公的資料でご確認ください(記事末尾の「参考資料・参考文献」をご参照ください)。
こうした医療側の動きを踏まえても、企業のSAS対策では、スクリーニングだけでなく、その後の受診につながりやすい環境を整える視点が重要です。
「見つける」より「つなげる」、「始める」より「続けられる」。
この視点が、これからの健診後対応の軸になっていくのだと思います。

2. 要受診者が医療につながらない、3つの分岐点
SASの導線は、大きく分けると「健診 → 受診勧奨 → 受診 → 検査 → 治療 → 継続」という流れになります。
その中で、対応が途切れやすい3つのポイントを確認しましょう。
① 健診後の通知で止まる
結果通知が本人に届いても、「様子を見ます」で終わってしまうケースです。
紙の通知や定型文だけでは、“自分ごと”になりにくい。
ここでは、誰が・いつ・どう声をかけるかを決めておくことが効いてきます。
② 受診の手前で止まる
「受診しよう」と思っても、仕事が忙しい、何科に行けばいいか分からない、検査が面倒そう…と、行動の手前で止まってしまうケースです。
この段階では、受診しやすい導線(相談先・紹介先・時間の確保)があるかどうかが大きく影響します。
③ 治療の継続で止まる
治療が必要と判断されても、装着が負担で続かない、通院の負担が大きい、といった理由で離脱してしまうケースです。
ここは企業の想像以上に“見えにくい”部分です。
だからこそ、「つないだ後」をどう支えるかまで設計しておく必要があります。
3つの分岐点を、企業の視点で整理すると次のようになります。
| 分岐点 | 起きがちなこと | 企業が整えたいこと |
|---|---|---|
| 健診後の通知 | 通知が届いても“自分ごと”にならず、様子見で終わる | 声かけの担当・タイミング・文面をあらかじめ決めておく |
| 受診の手前 | 何科に行くか分からない、時間が取れず後回しになる | 相談窓口・紹介先・受診しやすい時間帯の配慮を用意する |
| 治療の継続 | 装着や通院の負担で、途中から続かなくなる | 受診・通院しやすい働き方や環境を整える |
3. 「受診勧奨」から「受診支援」へ ― 企業が整えたい3つの設計
ここからが本題です。企業のSAS対策で差が出るのは、「受診してください」と伝える“受診勧奨”の一歩先、実際に医療へつながるまでの“受診支援”を仕組みとして持てているかどうかです。
1. 対象者の絞り込みを“仕組み”にする
健診結果や問診票の情報を、担当者の記憶や勘に頼らず、あらかじめ決めた基準で拾い上げる仕組みをつくります。
産業医・保健師などの専門職と相談しながら、健診情報や問診結果、SASスクリーニングの結果をもとに、受診勧奨の対象となる方をあらかじめ定めた基準で把握する。
これが属人的にならないほど、対象者の抜け漏れが減ります。
2. 役割分担を決めておく
人事・総務、産業医・保健師、そして現場の管理職。
それぞれが何をどこまで担うかを決めておくと、受診勧奨が“声かけだけ”で終わりません。
居眠りやヒヤリハットなど、安全面で気になる兆候がみられた場合に、管理職が診断を推測するのではなく、産業保健スタッフなど適切な相談窓口につなげられる体制を整えておくことも大切です。
3. 受診しやすい導線を用意する
「どこに相談すればいいか分からない」を減らすだけでも、受診につながりやすい環境づくりに役立ちます。
相談窓口を一本化する、紹介先の医療機関をあらかじめ整理しておく、受診や通院のための時間を確保しやすくする。
こうした“動きやすさ”の設計が、要受診者を医療につなぐ力になります。

4. 医療機関とつながる“入口”をどう整えるか
簡易検査(PG)と精密検査(PSG)の役割を、企業も理解しておく
企業が診断や治療を行うわけではありません。
ただ、流れを知っておくと受診勧奨の説明がぐっと伝わりやすくなります。
SASが疑われる場合、医療機関では問診や診察に加え、携帯型装置による簡易検査(PG)や睡眠ポリグラフ検査(PSG)などを用いて睡眠中の呼吸状態を評価し、その結果や症状などを踏まえて医師が診断・治療方針を判断します。
企業の役割は、この最初の一歩(検査の入口)まで、本人を無理なく後押しすることです。
遠隔モニタリングやオンラインの選択肢も、導線の一部として知っておく
近年は、CPAPの使用状況を遠隔でモニタリングする仕組みや、情報通信機器を用いた診療の選択肢も広がっています。
患者さんの状況や医療機関の体制によっては、通院負担の軽減や継続支援に活用できる場合があり、こうした仕組みは、「つないだ後も続きやすい」という意味で、企業の受診支援と相性のよいテーマです。
制度の詳細は変わっていくため、最新の公的資料で確認することをおすすめします。
5. 「つないだ後」を切らさない ― 継続を支える仕組み
治療は継続してこそ効果が期待できる
CPAP治療は、使用時間や治療継続が治療効果に関わることが知られており、継続しやすい環境づくりも重要です。
このため、企業としても「受診させて終わり」ではなく、治療や通院が無理なく続けられる働き方・環境を一緒に考えていく姿勢が求められます。
これは特別な制度ではなく、日々のちょっとした配慮の積み重ねだったりします。
支える仕組みを振り返り、継続しやすい環境を整える
受診支援の仕組みそのものを定期的に振り返ることも大切です。
個人の診療内容や治療状況を企業が必要以上に把握するのではなく、受診につながりやすい環境が整っているか、相談窓口が機能しているかといった観点から、健診後のフォロー体制を確認します。
なお、健康診断結果や診療・治療に関する情報は、個人情報保護法上の要配慮個人情報に該当します。
企業が取り扱う場合は、利用目的や閲覧範囲、保管方法などを明確にし、関係法令や社内規程に基づいて適切に管理することが重要です。

6. 明日からできる、健診後のフロー棚卸しチェック
最後に、自社の健診後フローを一度見直すためのチェック項目を置いておきます。当てはまらない項目があれば、そこが“つなぎ目”の候補です。
- 受診勧奨の対象を把握する基準(健診情報・問診・SASスクリーニング結果等)が、専門職と相談のうえ整理されているか
- 「誰が・いつ・どう声をかけるか」が決まっているか
- 受診先の相談窓口や紹介先が、従業員から見て分かりやすいか
- 受診・検査・通院のための時間を確保しやすいか
- 産業医・保健師・人事・管理職の連携で、情報が分断されていないか
- 受診支援の実施状況や健診後のフォロー体制を定期的に振り返っているか
7. まとめ ― 健診を「治療につながる入口」に変える
ここまで、企業のSAS対策を「検査して終わり」にしないための仕組みをお伝えしてきました。
ポイントは、次の3つです。
1つ目は、離脱を“本人のやる気”だけの問題にせず、“環境”の問題としても捉えること。
2つ目は、受診勧奨の一歩先、“受診支援”まで設計すること。
3つ目は、つないだ後も続けられるように支えること。
健診を“結果通知”で終わらせず、“治療につながる入口”に変える。
これが、企業のSAS対策を「実施する」だけで終わらせず、より実効性のある取り組みにしていくための大切なポイントだと私は思っています。
特別に大きな仕掛けは要りません。
まずは、いまの健診後フローの中で、SAS疑いがどこで埋もれているかを、一度みんなで眺めてみる。そこから始めませんか。
ゾーン株式会社では、企業向けSASスクリーニングから要受診者の医療機関への接続、検査、CPAP治療、その後の継続支援まで、企業・医療機関をつなぐ仕組みづくりを支援しています。
また、SASmanager®を活用した検査・受診状況の管理など、企業の睡眠医療DXにも取り組んでいます。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療方針を示すものではありません。受診や治療の判断は、必ず医療機関にご相談ください。
参考資料・参考文献
- 令和8年度診療報酬改定について【医科全体版】(厚生労働省)
- 令和8年度診療報酬改定「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料の見直し・持続陽圧呼吸療法充実管理体制加算の新設」(厚生労働省)
- 特掲診療料の届出様式(令和8年度診療報酬改定)(厚生労働省 地方厚生局)
- 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020(日本呼吸器学会)
- 睡眠時無呼吸症候群/SAS(厚生労働省 e-ヘルスネット)
- 厚生労働省 D237 終夜睡眠ポリグラフィー
関連ページ
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