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2026年6月の診療報酬改定を前に、企業が見直すべきSAS対策とは? 産業医・人事が今動くべき理由

こんにちは、担当Sです。

現場で安全を守る。人を守る。会社を守る。
そのために今、産業医や人事の皆さまにぜひ見直していただきたいのが、睡眠時無呼吸症候群(SAS)対策です。

2026年6月の診療報酬改定は、企業に直接点数請求が関係する話ではありません。ですが、医療側で検査・治療・継続支援の評価軸が変わるということは、継続支援の重要性がより明確になるため、企業側の受診導線づくりや健康管理の考え方にも影響します。私はここが重要なポイントだと考えています。

今回の改定は、「問題が起きてから対応する」時代から、「早く見つけて、継続して支える」時代への後押しです。

なぜ今、企業がSAS対策を見直すべきなのか

SASは、寝ている間に呼吸が止まったり浅くなったりする病気です。その結果、十分に眠ったつもりでも、日中の強い眠気、集中力の低下、だるさなどが起こります。企業の立場で見れば、これは単なる個人の体調問題ではありません。ヒヤリ・ハット、判断ミス、作業効率低下、重大事故のリスク要因なり得るテーマです。

ご存じの通り、SAS対策は労災防止、交通事故リスクの抑制、健康経営、人的資本経営、従業員パフォーマンス向上に直結します。特に、運輸・運送・建設・製造といった“眠気が事故に直結する現場”では、優先度の高いテーマです。
人事としても、産業医としても、「睡眠の問題は個人の領域だから本人任せ」ではなく、組織として拾う仕組みを持つことが重要です。

見逃されやすいのに、放置コストが大きい

SASのやっかいなところは、本人が気づきにくいことです。
「いびきがある」「昼間眠い」「朝から疲れている」くらいでは、忙しい方ほど我慢してしまいます。ですが、SASは高血圧、糖尿病、肥満、心疾患、脳卒中などとも関連が指摘されており、放置によって健康面の負担が積み上がります。

日本国内の潜在患者数は900万人以上と推定される一方、CPAP治療を受けているのは約70万人程度とされています。つまり、疑いがあるのに検査や治療につながっていない方が非常に多いということです。企業で言えば、表面化していない“見えないリスク”が現場に残っている状態とも言えます。

産業医・人事が押さえたい代表的なサイン

  • いびきがひどい
  • 日中の眠気が強い
  • 起床時の頭痛やだるさがある
  • 夜中に苦しくて目が覚める
  • 集中力・記憶力が落ちている
  • 居眠り運転や作業中の眠気が心配
  • 高血圧、肥満、糖尿病などの生活習慣病がある

このあたりに該当する従業員がいるなら、健康相談・健診後フォロー・受診勧奨のなかでSASを候補に入れておくべきです。

2026年6月改定は、企業にも無関係ではない

今回の改定では、CPAP治療における継続利用やモニタリングの重要性が、これまで以上に評価の軸として意識される内容となっています。

企業側から見れば、この改定は非常にわかりやすいメッセージです。

これは、企業側の健康管理や安全配慮においても、「始めさせる」だけでなく「続くように支える視点」が求められていることを意味します。

継続支援が重要になる理由

加算に関わる基準として、たとえば、一定割合の患者が継続利用基準を満たしていることや
個人ごとの使用状況を継続的に確認することなどが要件として示されています。

これは医療機関側の要件ですが、こうした基準が設けられていることからも、継続支援の重要性が制度上も明確になっているといえます。

人事や産業保健の現場では、

  • 受診勧奨
  • 初回検査への接続
  • 治療開始後の離脱防止
  • 定着しやすい就業配慮や声かけ

まで含めて設計すると、SAS対策はぐっと実効性が上がります。

企業が整えるべき受診導線は3段階です

私は企業向けのSAS対策を考えるとき、まずは複雑にしすぎず、3段階で考えるのがいいと思っています。

1. 疑いを拾う

最初の段階は、眠気やいびき、生活習慣病リスクのある従業員を拾うことです。
定期健診の問診、産業医面談、長時間労働者面談、運転業務従事者の安全管理、管理職からの相談など、入口はいくつもあります。ここで大切なのは、「睡眠の話をしていい空気」を作ることです。

2. 検査につなぐ

SAS検査には、簡易検査の在宅PGと、より詳しく見る在宅PSGがあります。
忙しい従業員にとって、在宅で進めやすい検査導線があることは大きな後押しになります。

3. 治療継続まで支える

CPAP治療で大事なのは、続けられるかどうかです。マスクの違和感、装着の不安、通院負担、忙しさ。離脱理由は現場にたくさんあります。

だからこそ企業は、「受診しましょう」で終わらず、

  • 初回導入時の理解促進
  • 治療初期の離脱防止
  • 本人が相談しやすい雰囲気づくり
  • 業務との両立支援

まで視野に入れるべきです。ここまでできると、SAS対策は“やった感のある施策”ではなく、成果が出る施策になります。

産業医・人事担当者が今すぐやるべきこと

健診後フォローの項目に「睡眠」を入れる

血圧、血糖、BMIだけでなく、いびき、日中の眠気、睡眠中の無呼吸指摘といった項目を、受診勧奨の会話に自然に組み込むのが第一歩です。生活習慣病とSASは関連が深いため、既存の健康管理導線と相性がいいテーマです。

高リスク職種から先に着手する

運転業務、夜勤、交替勤務、重機・機械操作、高所作業など、眠気が事故に直結する部門から始めるのが現実的です。最初から全社一斉で広げなくても大丈夫です。リスクが高いところから先に守る。これは現場施策の基本だと思っています。

“検査して終わり”にしない

人事施策でよくある失敗は、スクリーニングだけ実施して、その先の受診・治療導線が弱いことです。
SAS対策は、
気づく → 検査する → 必要なら治療する → 続ける
ここまでつながって初めて意味があります。今回の改定も、まさにその方向を後押ししています。

健康経営の施策としても、かなり筋がいい

SAS対策は、事故予防だけでなく、健康経営優良法人人的資本経営の文脈でも非常に相性がいいテーマです。睡眠対策は健康経営や企業価値向上に寄与する取り組みとして整理されています。

実際、睡眠の質が上がれば、集中力、生産性、日中パフォーマンスの改善が期待できます。
「健康管理をやっています」と言うだけでなく、現場の安全・生産性・人材定着に効く健康施策として説明しやすい。これは人事・産業保健施策として大きな強みです。

まとめ:6月を待たず、4月から動くべきです

2026年6月の改定は、企業にとって“診療報酬の話”で終わらせるにはもったいないテーマです。
医療側の制度が変わる今は、企業側も受診導線、健診後フォロー、治療継続支援の組み方を見直すタイミングです。

医療機関が重視する「継続支援」と、企業側の「安全配慮・健康管理を現場でどうつなぐかは、実は制度と実務の“谷間”になりやすいポイントです。

私たちは、医療と企業の間に立ち、「受診させること」ではなく「続く仕組み」を一緒に設計する役割を担います。

私は、SAS対策は「余裕ができたらやる施策」ではなく、安全配慮・健康経営・人的資本経営を前に進めるための実務テーマだと考えています。
特に産業医・人事の皆さまには、ぜひこの4月から動いていただきたいです。

早く拾う。早くつなぐ。しっかり続ける。
この3つができるだけで、会社のリスクはかなり変わります。

企業でのSAS対策、健康経営施策、受診導線づくりをご検討中の方は、ぜひご相談ください。
在宅検査から治療サポートまで、産業医・人事の皆さまの運用に合わせた形でご提案いたします。

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