こんにちは、担当Sです。
日頃、クリニックの先生方とお話しさせていただく機会が多いのですが、最近ひときわ確信を強めていることがあります。
それは――
「生活習慣病外来は、実はSAS(睡眠時無呼吸症候群)の宝の山である」ということです。
わたしは診療報酬関連に仕事の中で毎日のように触れています。
だからこそ、血圧や血糖の数値を追う毎月の外来に、どれだけSASの方たちが「気づかれないまま」流れているかを見てしまうのです。
今日は、そんな内科クリニックの先生方に向けて、生活習慣病外来からSAS患者さんを拾い上げる方法を、具体的なコツ込みでお伝えします。
1.なぜ生活習慣病外来に「隠れSAS」が潜むのか
高血圧・2型糖尿病・脂質異常症・メタボ。
この顔ぶれは、そのままSASのハイリスク群でもあります。
中年男性、肥満気味、首回りがしっかりしている、いびきがある――要素が重なれば重なるほど、SASの可能性は高くなります。
大切なのは、SASは、高血圧や2型糖尿病、肥満などの生活習慣病と深く関係する疾患です。
睡眠中の無呼吸や低酸素は、循環器・代謝系にも影響を及ぼすことが知られています。
SASを適切に診断・治療することは、睡眠症状だけでなく、高血圧などの併存疾患を管理する上でも重要です。
つまり、生活習慣病を診ているクリニックこそ、SASを「最初に拾い上げられる医療機関」なのです。
生活習慣病の背景にSASが隠れている場合、それに気づかないまま治療が続く可能性があります。だからこそ、日常診療の中で睡眠にも目を向けることが大切です。
夜の症状は、外来では見えない
なぜ見落とされるのか。理由は単純で、診察室では患者さんの寝姿を見ることがないからです。
夜間に呼吸が止まっている姿を知るのは、多くの場合、隣で寝ているご家族だけ。
そしていびき・日中の眠気・夜間頻尿・起床時の頭痛や口の渇きといった夜のサインは、本人がなかなか自覚しないものです。
特に一人暮らしの方やご高齢の方は、指摘する人の存在自体がないまま、相当程度まで進んでしまうケースが少なくありません。
「年のせい」「疲れのせい」でずっとやり過ごしている方も多いのです。

2.診察室でできる「3つのサイン」チェック
「うちの外来でも拾えるの?」――拾えます。
特別な機器は必要ありません。普段の問診と身体診察の延長で、十分スタートできます。
① 就寝周りの話を聞いてみる
「夜、何回トイレに起きますか?」
「朝起きたとき、頭が重い・喉が渇いている感じはありますか?」
夜間頻尿や起床時の頭痛・口渇は、夜間の無呼吸を示唆する大切なサインです。
高血圧で利尿薬を飲んでいないのに夜間頻尿が目立つようなら、SASの可能性を頭の片隅に置いてみてください。
いつもの血圧・血糖コントロールの話の末尾に、さりげなく一句足すだけで会話は始まります。
② 首回りとBMIをさりげなくチェック
首回りとBMIは、立派なスクリーニング指標です。
診察のついでに首回りを測り、「首周りがたくましくなりましたね」と軽く話題にして、その流れでいびきの有無を聞く
――こんな自然な誘導がとても効果的です。
メタボ健診の結果や身体計測のデータは、診察室ですぐに見られます。
「血圧や血糖のコントロールを続けているこの患者さん、BMIや頸囲も含めて見ると、もしかして睡眠にも問題があるのでは?」
――この気づきが、拾い上げの第一歩になります。
③ 「運転中に眠くなる?」の問いかけ
眠気のスクリーニングには、エプワース眠気尺度(ESS)という8問の評価表があります。
しかしいきなり8問聞くよりも、まずは「信号待ちでうとうとすることがあるか?」「長距離運転で睡魔に襲われることがあるか?」といった、実害ベースの質問から入るのがおすすめです。
ここで怪しい感触が得られたら、待ち時間などにESSを記入していただくのがスムーズです。
患者さん自身も「自分の眠気が病気のサインかもしれない」と自覚できるので、その後の受療行動がぐっと変わります。

3.拾い上げたら、あとは「動線」づくり
スクリーニングで引っかかった方の受け皿を、院内で事前に用意しておくことが何より大事です。
「拾い上げ→簡易検査→確定・治療→継続」の動線を決めておけば、診察室での迷いがなくなります。
ステップ1 簡易検査で確率を高める
自宅で就寝時に装置を装着するだけの簡易検査(PG)は、外来への往復が不要で患者さんの負担が小さく、結果も早く出ます。
携帯用装置を使用した終夜睡眠ポリグラフィーは、保険診療上720点で算定されます。自宅で実施できるため、患者さんの負担を抑えながら評価しやすい検査です。
ステップ2 確定診断と治療適応――2026年6月改定が追い風に
ここで耳寄りな話をひとつ。2026年6月の診療報酬改定で、CPAP治療の保険適用基準が引き下げられました。
簡易検査(PG)では従来「40以上」だったのが「30以上」に、精密検査(PSG)では「20以上」から「15以上」に。
治療の入口が広がった形です。
「以前、基準に届かないと言われて様子見になっている」
「グレーゾーンと説明されたまま」
――そんな患者さんに声をかけるのに、今は絶好のタイミングです。
カルテを見返すと、必ず数人思い当たるはずです。
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ステップ3 CPAP導入と継続のサポート体制
CPAPはレンタルで提供される治療です。
継続率のカギは、導入初期のフィッティングと毎月のデータ確認です。
在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料のサイクルは、生活習慣病の定期フォローと自然に合体できます。
自院で呼吸管理まで見るのが難しければ、専門医療機関や睡眠専門外来との連携先を1つ決めておくだけで、外来の流れは驚くほど整います。
4.診療報酬の心得――「算定できるか」より「提供できるか」
報酬算定を長年見てきた者として、ひとことだけ申し上げると――SAS診療では、検査・診断・治療・機器管理のすべてを自院だけで担うのではなく、専門医療機関や検査・機器提供事業者と連携して診療体制を構築する方法もあります。
連携先に検査・管理を依頼しながら、自院は生活習慣病のコントロールとスクリーニングに専念する、という役割分担も立派な形です。
2026年6月改定ではCPAP指導管理の評価にも見直しがあり、体制整備の届出で加算がつく仕組みも新設されています。
いずれにせよ、算定の知識は「治療を提供する手段」であって目的ではありません。
「点数が取れるか」ではなく「患者さんの眠りを改善できるか」を基準に、動線を組んでいただくのがいちばん硬いやり方だと考えています。
5.SASを拾い上げることで期待できる診療上のメリット
ここまで医療の話が中心でしたが、経営の観点でも、この取り組みは意外なほどポジティブな効果があります。
1つ目は、生活習慣病をより包括的に診ることにつながることです。
高血圧や糖尿病などを診る際に、睡眠という視点を加えることで、患者さんの状態をより多面的に把握できます。
2つ目は、患者さんのQOL改善のきっかけになることです。
睡眠の問題に気づき、適切な検査や治療につながることで、日中の眠気や疲労感などが改善する可能性があります。
3つ目は、地域の医療連携を広げられることです。
睡眠専門医、耳鼻咽喉科、歯科などと連携先を持つことで、自院で対応が難しい患者さんも適切な診療につなぎやすくなります。 
6.最後に――「眠りを診る」は、生活習慣病診療の延長にある
SASの拾い上げに特別なことは何もありません。
普段の外来で夜間の話を聞いて、首回りとBMIを眺めて、眠気について尋ねる。
その先に、保険適用の検査と治療がすでに整っています。
患者さんが「寝ている時間」まで診られるクリニックは、これからの生活習慣病診療の強い味方になるはずです。
良い睡眠を支えることも、これからの生活習慣病診療の大切な一部だと考えています。
当社では、簡易検査装置やCPAPのレンタルを通じて、クリニックの先生方の「拾い上げ」をお手伝いしています。
「うちの外来にもSASの方はいるだろうか」――まずはそんな雑談からでも、ぜひ一度お気軽にご相談ください。
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参考資料・参考文献
- 令和8年度診療報酬改定について【医科全体版】 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_71068.html - 日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」
https://www.jrs.or.jp/citizen/disease/i/i-05.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠時無呼吸症候群/SAS」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/dictionary/heart/yk-026.html - 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
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